「うちはもう住宅ローンは組めないのでしょうか?」
「マイホームの夢は捨てた方がいいのでしょうか?」
「なぜ審査に落ちたのか知りたいです。納得できなくて・・・。涙が止まりません・・・」
経験上、相談にいらっしゃる方からの第一声は、多くの場合このような感じです。
審査に落ちた理由は教えてもらえないため、当然の悩みとも言えるでしょう。
残念ながら、住宅ローン審査は「数打ちゃ当たる」が通用しない世界なのです。
あなたがあちこちで審査を受けていることは情報共有されているため、次から次に審査を受けていること自体、“ほかでも断られているのではないか”と怪しまれる原因となります。
したがって、審査で落ちてしまった原因を特定することが、次の審査を突破するための最重要課題になります。
ここで、住宅ローン審査に通らない理由について、よくある“3 つのパターン”にまとめてみました。
原因特定の足がかりとして、まずどのパターンで引っかかったのかを検証してみましょう。
3つのパターンとは、以下の通りです。
1.借入額が大きすぎる、と判断された
2.返済能力が低い、と判断された 3.健康状態が不安、と判断された |
審査に落ちるときには、上の3つのいずれか(あるいは複数)に引っかかっている可能性があります。
それでは、この3つに関して詳しく説明していきましょう。
1.借入額が大きすぎる、とは?
借入額が大きすぎるかどうかは、収入とのバランスを見て判断します。
ひとことで“収入”というと、いまの年収が真っ先に浮かぶと思いますが、実際には、“残りの生涯年収”と“借入額”とのバランスも見ています。
審査において、「完済時年齢(住宅ローンを返し終わる年齢)」や「借入時年齢(住宅ローンを組む年齢)」という要素も重要視しているのは、このためです。
具体的に定年退職を 65 歳だと仮定して、2つのケースを比較してみましょう。
・65 歳までに返済が終わるAさん
・75 歳まで返済が続くBさん
当然ながら、Aさんの方が住宅ローン審査では評価が高くなります。
Bさんの場合は、「退職後も返済を継続できるのか・・・?」というところを重点的に見られ、審査結果を出すことになります。
では完済時年齢が重視されるのであれば、住宅ローン審査は若いほうが有利なのでしょうか?
ところが、そう単純でもありません。
審査では、「現在の年収」も重視されているのです。
年収 300 万の人と1000 万の人では、当然ですが、1000万のほうが有利です。
一般的に、若いときの方が年収は低いので、必ずしも“若い=有利”ということにはならないのです。
また「年収」は、審査で重要視する「融資可能額」や「返済負担率(収入に対する返済額の割合)」といった項目にも、影響を及ぼします。
正確には各金融機関の審査基準を確認する必要がありますが、年収別の住宅ローン返済額の割合が以下の表に示す数値以内におさまらないと、審査で否認される可能性が高くなります。参考にしてください。
年収 | 住宅ローン年間返済額が占める割合 |
250万未満 | ※住宅ローンの借入自体が難しい |
250万~300万 | 年収の25% |
300万~400万 | 年収の30% |
400万~700万 | 年収の35% |
700万以上 | 年収の40% |
※上記の表は、あくまでも目安です。金融機関によっても基準は異なります。
今後のコラムでも借入限度額について詳細をお伝えしていきますが、まずここでは、住宅ローン審査には、現在の年収も、生涯年収も、どちらも重要だということを認識しておいてください。
ちなみに、審査の際に、「もう少し借入額を減らしてもらえたら貸せるのですが・・・」と言われることがあります。
そのときは、借入限度額をオーバーしているのが住宅ローンを組めない原因だと思って間違いありません。
まず、そこを解消できないと審査に通ることは難しいので、借入額を減らすか住宅ローン以外の借入を返済する、あるいは借入限度額の設定が大きい金融機関を個別にあたってみることが必要になります。
2.返済能力が低い、とは?
次に、返済能力についてです。
返済能力とは、分かりやすく言えば「お金を回収できるだけの条件が揃っているかどうか」です。
金融機関が一番恐れているのは、ただ1つ。
「貸したお金が返ってこないこと」なのです。
「勤続年数」、「担保評価」、「連帯保証」といった項目を、審査で重視するのは、そのためです。
具体的に見ていきましょう。
・勤続年数について
まず「勤続年数」についてです。
たとえば、しょっちゅう転職を繰り返している友人から「3か月後に返すから 10万円貸して」と言われたらどうしますか?
なんとなく、貸したお金が返ってくるか不安になりませんか?
「その10万円が次の転職活動費用にあてられて、しかも転職に失敗したら・・・」なんて想像すると、気軽には貸せないですよね。
勤続年数は、あなたが安定的に収入を得ているかどうかを知るバロメーターです。
勤続年数が長い人の方が、審査では有利です。
逆に短すぎると、年収は高くても審査では不利になります。
勤続年数がどのくらい必要か、という基準については、金融機関によっても異なりますが、「3年以上」という条件を設定しているところが以前は多かったのですが、必ずしも3年以上必要なわけではありません。
今では、目安として「少なくとも1年以上はほしい」という金融機関が一般的です。
勤続年数の条件が心配な方は、個別に金融機関に問い合わせて「短くてもOK」という所を探してみるか、少なくとも1年以上になるまで待つことが大事です。
・担保評価と連帯保証について
「担保評価」や「連帯保証」については、貸したお金が返ってこないときに備えるためのものです。
お金を融資する(貸す)ときには、担保を設定します。
住宅ローンの場合は、土地と建物が主な担保になります。
返済が滞ったら、担保を売ることで埋め合わせをします。
したがって、担保評価が高い物件ほど審査は有利です。
また、本人がお金を返せない時に、誰かが代わりに返してくれるのなら、金融機関としては安心してお金を貸すことができます。
それが「連帯保証」です。
住宅ローンの場合は、通常は保証会社と呼ばれる会社が“保証人”の代わりをします。したがって一般的には、保証会社の審査を通過すれば住宅ローンが組めることになります。
まれに、保証会社ではなく、連帯保証人を立てて住宅ローンを組むケースもあります。この場合には、連帯保証人の返済能力も審査に影響を及ぼします。
以上のように、返済能力に関しては、
・あなたに安定的な収入があるか?
・あなたが返せないときに、他に返せるあてがあるか?
という2点を重視しています。
返済能力が低いと判断されて住宅ローン審査に通らなかった場合には、どの項目の評価が低かったのかを検証し、それをカバーするだけの材料を用意して、金融機関にアピールしていく必要があります。
3.健康状態が不安、とは?
もうひとつ大事な審査のポイントは、「健康状態」です。
金融機関は、借りる人の健康状態も重視しているのです。
なぜでしょうか???
先ほど、一番怖いのは“貸したお金が返ってこないこと”と述べました。
お金が返ってこない原因で、想定しておかなければならないのは、お金を借りた「あなた」に起きるかもしれない“不測自体”です。
借入額が適正で、返済能力が高くても、借り手が死んでしまったら返済が滞ってしまいます。
したがって金融機関では、住宅ローンを組むときに、原則、生命保険に入るよう義務付けています。
生命保険の受取人を金融機関に設定しておけば、もし、あなたがお亡くなりになった場合でも、保険金をローン返済にあてることができます。
この住宅ローン用の生命保険のことを、「団体信用生命保険(略して団信)」と言います。
健康状態が万全でない場合、この団体信用生命保険に加入できないことが出てきます。
そうすると、「残念ながら今回はお貸しできません・・・」ということになってしまいます。
「生命保険に加入できないなんて、重病にかかっている人しか該当しないのではないか?」と思っている方も多いですが、そんなことはありません。
実際には、意外なくらい些細なことで団信の加入を断られることがよくあります。
団信加入時の審査では、主に
- 3年以内の入院・手術の有無
- 3か月以内に医師の診察を受けたかどうか
といった項目が聞かれますが、命に別状のない病気で入院・手術をしている場合でも、正直に告知することが求められます。
たとえ「大した病気じゃないから、この先ずっと元気で働いて、完済できる自信があります!」と主張しても、団信に加入できなければ貸せないルールなので、このままでは通りません。
健康状態が原因で否認された場合には、複数の生命保険会社の査定基準(診査基準)を熟知している人にアドバイスを受けるのが早道です。
団信を引き受けている保険会社によっても査定基準は異なりますが、基準の目安と可能性くらいならアドバイスをもらえるはずです。
逆に、保険の査定をあまり知らない人に相談しても良い対策はできないので、相談相手の人選も大切になります。
●まとめ
住宅ローンの審査項目は、多岐にわたるため複雑です。
そして、その複雑さゆえに、審査に通らなかった理由を特定するのは困難です。
今回、その複雑な審査項目を、3つのパターンにシンプルに分類してみました。
1.借入額が大きすぎる
2.返済能力が低い
3.健康状態が不安
上記の3パターンで見ていくことにより、あなたが審査に落ちた原因も特定しやすくなるはずです。
審査に通るためには、1にも2にも原因特定。
それさえできれば、次の対策も見えてきます。
原因特定や審査対策については、今後アップする記事にも具体的に書いていく予定です。
ぜひ参考にしてください。