最近多い相談に、不動産投資がらみの相談があります。
ひとつは、「これから不動産投資をしようと思っているが、住宅購入とどっちが先の方が良いのでしょうか?」というもの。
もうひとつは、「不動産投資をすでにやっていて借入があるが、住宅ローン審査に通りますか?」というものです。
どちらにも共通して言えるのは、『不動産投資のための借入は、住宅ローン審査には不利になる』ということです。
したがって、不動産投資と住宅購入のどちらを先にするか迷っている前者の質問に関しては、「住宅購入を先にやってください」というのが答えになります。
一方、後者については住宅ローンを組める可能性はかなり低くなります。
本コラムでは、不動産投資ローンが住宅ローン審査で不利になる理由と、それを通すための対策についてお話したいと思います。
目次
■不動産投資のためのローンは「借入」扱い
・投資なのに借金と同じ扱いを受ける
まず、不動産投資ローンと住宅ローン審査の関係で一番最初に抑えておきたいポイントは、”投資ローンが審査でどのように扱われるか?“ということです。
不動産投資をされている方にとっては不愉快な現実かもしれませんが、住宅ローン審査においては、投資用ローン(アパートローン、プロパーローンいずれも)は、単なる「借金」として扱われます(法人名義で不動産投資をする場合は除く。あくまでも個人契約で不動産投資のローンを組んだ場合です)。
借金として扱われるというのは、つまり、クレジットカードのリボ払いやマイカーローンと同じ扱いということです。
こう説明すると、「“消費のための借金”と”投資のための借入”を一緒にしないで!」という声が聞こえてきそうですが、住宅ローン審査の中では残念ながら同等の扱いとなります。。。
・収益が出ていてもそれほど扱いは変わらない
「確かに借入には違いないけれど、うちの場合は収益物件になってるから、その収益性についてはプラスに見てくれるんですよね???」という質問もよく受ける質問です。
これも残念ながら、プラスに見てくれるとは限りません。実際には、ほとんどの金融機関で、あまり収益性は考慮されません。
「これだけの利回りなのに考慮してもらえないなんて・・・」という声もお客様から頂きますが、ほとんどの金融機関の審査基準がそうなっているので、審査に落ちてしまうのです。
では、審査基準のどういうところに引っかかるのでしょうか???
■返済比率(返済負担率)をクリアするのは困難
・審査で重要視される返済比率(返済負担率)
不動産投資の借入が住宅ローン審査で引っかかりやすいのは、“返済比率(負担率)”に影響してしまうからです。
返済比率とは、年収に対する借入金(住宅ローンも含む全ての借入金) の年間返済額の割合のことです。
たとえば、年収500万の人が毎年100万円の借入金の返済をしているとすると、
返済比率=100万÷500万=0.2(20%)
と計算します。
返済比率は年収ごとに基準があります。
一般的なのは、年収400万以上の場合、返済比率が35%以下であれば借入ができる基準になっている金融機関が多いです。
この返済比率は住宅ローン審査で最も重要視されているものの一つです。
したがって、この基準を超えた金額までは、住宅ローンは組めないことになります。
・過去の相談事例から計算すると・・・
では、不動産投資をされている方だと、具体的にどのような感じになるのでしょうか?
実際に過去の相談事例をもとに計算してみましょう。
Aさんはサラリーマン投資家で、普段は企業に勤務しながら不動産投資をやっています。
年収は550万。
不動産投資のための借入が約4000万あり、年間返済額は250万です。
今回、住宅ローンを組みたい金額は3500万で、年間返済額は130万です。
Aさんは、住宅ローンを組めるのでしょうか???
Aさんの場合、不動産投資の借入の年間返済額が250万円、組みたい住宅ローンの年間返済額が130万円なので、もしこの住宅ローンが組めるとすると年間返済額は、
250万円+ 130万円= 380万円
となります。
この380万円をAさんの年収550万円で割ると返済比率が求まります。
したがって、返済負担率は、
380万円÷ 550万円= 0.691 (四捨五入)
となります。
Aさんの年収では、住宅ローン審査における返済比率の基準は35%(0.35)までなので、借入希望額まで住宅ローン組もうとすると、基準を大幅にオーバーしてしまいます。
したがって、Aさんは住宅ローン審査に落ちるという結果になってしまうのです。
■住宅ローンが組める金融機関は少ない
・審査に通してくれる金融機関もある
ここまでの説明を読んできた皆さんには、「住宅ローン審査に通るのは全く無理だ」と思われがちですが、実際には不動産投資用のローンを抱えている方でも、住宅ローンを組める金融機関は、いくつか存在します。
ただし、残念ながらまだまだ、そういった金融機関の数は限られている状況です。
数多くある金融機関の中から、投資用ローンを抱えつつ住宅ローンが組める金融機関を探していくだけでも、かなりの労力とエネルギーを費やすことになるでしょう。
先日ご相談にいらっしゃった方も、1年前に10以上の金融機関に自分で足を運び、すべて門前払いされ、結果「自分には住宅ローンは組めないんだ」と断念してしまったそうです。
マイホームの夢をかなえるために、一時は、せっかく収益の出ている投資用物件を整理することも検討されていたそうです。。。
それだけ投資用ローンを抱えつつ住宅ローンが組める金融機関を探すことは、骨の折れる作業なのです。
・失敗すると数少ない候補を潰してしまう
上述したように、投資用の借入がある状態で住宅ローンを組める金融機関は、数が限られています。
そのうえ、たまたま運良く住宅ローンを組める金融機関を見つけることができても、その金融機関によって、審査のために準備する書類も変わります。
その必要書類を確認し、抜け漏れなく準備していくだけでも、かなりの労力が必要になってきます。
さらに気をつけなければいけないのは、住宅ローン審査のやり直しのきかない金融機関もあるということです。
準備すべき書類に抜け漏れがあったり、必要な情報を書き忘れていたことが原因で、一旦審査に落ちてしまうこともあり得ます。
そうなると、審査自体のやり直しをやってくれない金融機関もあるのです。
したがって、投資用ローンを抱えて住宅ローン審査を受ける場合には、それ相応の準備と知識が必要です。
一度失敗すると後戻りができないということは、不用意なやり方で数少ない金融機関の候補をつぶしてしまうことにもなりかねません。
結果、住宅ローンを受け付けてくれる金融機関がほとんどない状況に陥ってしまう可能性もあるので、提出書類の準備には十分に注意しましょう。
■まとめ
不動産投資用の借り入れがある方にとって、住宅ローン審査に通るのは非常に難易度が高いのが現実です。
住宅ローンを組むには、十分な知識と経験が必要となるので、投資用ローンを抱えている方は住宅ローン審査の専門家とタッグを組んで審査に臨むのがオススメです。
・どの金融機関なら住宅ローンが組めるのか?
・何をアピールして交渉していくのか?
・審査に通るために、どのような書類を準備すれば良いのか?
などなど、越えるべき壁はたくさんあります。
数少ない住宅ローンが組める金融機関の候補を自らつぶしてしまわないよう、不動産投資の借入がある方の住宅ローンを組んだ実績が豊富な専門家を選ぶことも検討したほうが良いでしょう。
手前味噌ですが、当研究所にも多数の実績がありますので、投資用ローンをお抱えの方はぜひご相談ください。