不動産投資をして家賃収入を得る方法は浸透していますが、ここ数年、賃貸併用住宅を考える方も少しずつ増えてきました。
賃貸併用住宅とは、住宅の中の一部に賃貸部分を作る方法です。
よく店舗と住宅を一緒にしている「店舗併用住宅」というのがありますが、それをイメージすると理解しやすいと思います。
賃貸併用住宅は、その店舗部分が賃貸物件になっているものです。
賃貸併用住宅は、以前よりあったのですが、ここ5年ほどで徐々に浸透してきています。
まだまだ多くの方が利用しているわけではないですが、賃貸を併用することのメリットも多いため、今後増えてくるかもしれません。
そうはいっても、まだ数が少ないため、住宅ローンをすんなり組める金融機関が少ないのも事実です。
本コラムでは、賃貸併用住宅のメリット・デメリット、賃貸併用住宅で住宅ローンを組むためのポイントについてお伝えしたいと思います。
目次
■賃貸併用住宅のメリット・デメリットとは?
ではまず、賃貸併用住宅のメリットとデメリットを見ていきましょう。
・メリット
賃貸併用住宅の最大のメリットは、家賃収入があることです。
“家賃収入”と書くと、「別で賃貸物件を持っているのと何が違うの???」と思われるかもしれません。
賃貸物件を住居とは別の土地に持つ場合、いわゆる不動産投資ということになります。そういった場合、一般的には投資用ローン(アパートローンや事業用ローン等)を組むことになります。
一方、賃貸併用住宅の場合、諸条件を満たせば賃貸部分も”住宅ローン”で組むことが可能です。
投資用のローンと住宅ローンの一番の違いは、金利です(住宅ローンの方が金利が低い)。
したがって、賃貸部分への投資費用を住宅ローンで組める賃貸併用住宅は、金利が低い分、利回りが高くなるというメリットがあります。
そして、賃貸収入を自宅の住宅ローン返済に充てることができるため、住宅ローン返済の負担を軽減することもできます。
・デメリット
一見良いことづくめの賃貸併用住宅ですが、もちろんデメリットもあります。
一番のデメリットは空室リスクです。
これは不動産投資すべてに共通して言えることですが、賃貸併用住宅の場合も、賃貸部分にずっと入居者がいない状態になれば、その分、見込んでいた収入が入ってこないことになります。
そして、空室が年単位で埋まらないことになると、住宅ローン返済に充てたかった家賃収入がなくなるので、自宅のローン返済がどんどん苦しくなります。
賃貸併用住宅を建てる際には、当然ですが、周囲の賃貸物件の状況(家賃相場や入居者の属性など)も調べて、入居者の求める部屋作りや家賃設定を心がける必要があります。
それから、もうひとつ重要なデメリットがあります。
賃貸併用住宅のメリットとして、「賃貸部分にも住宅ローンが組める」という話が出てきましたが、これもすべての金融機関でできるわけではありません。
したがって、賃貸併用住宅を購入する場合、
・賃貸部分まですべて住宅ローンでまかなえる金融機関が限られる
・借換のときにも、選べる住宅ローン商品が限られる可能性がある
というデメリットがあります。
以上のデメリットを理解したうえで購入するのであれば、かなり良い買い物になるのでお勧めです。
賃貸併用住宅の住宅ローンについては、貸し出しの条件が色々あるので、以下で説明したいと思います。
■賃貸併用住宅で住宅ローンを組むための条件は?
さて、メリットとデメリットが混在している賃貸併用住宅ですが、上述したようなデメリットを解消できる対策があるのであれば、検討に値するものになります。
ここでは、賃貸併用住宅の2つ目のデメリットである”住宅ローン”に関してお伝えしたいと思います。
・住居部分が51%以上
まず、賃貸併用住宅で住宅ローンを組むときに大切なのは、
「建築面積のうち、住居部分が51%以上を占めること」
です。
たまに、「我が家は狭くてもいい。賃貸部分を増やして、住宅ローンをほぼゼロにしよう」という考えで家作りに取り掛かる方がいます。
もちろん、賃貸部分を多く設計して家を作ること自体は、違法ではないので自由に出来ますが、住居部分が51%以上ないと、金融機関では“不動産投資”とみなされてしまいます。
したがって、“住宅ローン”として審査をするのではなく、“不動産投資用のローン”として審査されることになります。
審査に通ったとしても、不動産投資用のローンは金利が高いため、結局、自分たちの住む住宅部分の借入に対する金利も高くなってしまいます。
こうなってしまっては、「自宅とは別に不動産投資物件を買ったほうが良かった」ということになりかねません。
住宅ローンの低金利のメリットを最大限に活かすためにも、「住居部分が51%以上」はしっかり守ることをお勧めします。
・家賃収入をどう見てくれるか?
賃貸併用物件を考えるときに問題になるのが、返済比率(返済負担率)です。
返済比率とは、年収に対して住宅ローン返済額(年額)が占める割合のことです。
自宅のみの物件を購入するよりも、賃貸併用住宅の方が購入価格は高くなります。
したがって、住宅ローン審査で重要視される“返済比率”が、審査で求められる基準よりも高くなってしまう可能性があります。
賃貸併用部分も住宅ローンが組める可能性があるとはいえ、審査に通らないことになっては元も子もありません。
ではどうしたらよいのでしょうか???
金融機関によっては、将来想定している家賃収入を、住宅ローン審査でも加味してくれるところがあります。
たとえば、現在の年収が450万、想定家賃収入が年間120万の場合、
450万+120万=570万
を基準に借入可能額を計算してくれる金融機関もあるのです。
賃貸併用物件の購入費用すべてを住宅ローンで借入するためには、こういった金融機関を探すことが重要です。
■住宅ローンが組める金融機関の探し方
・金融機関を探す
賃貸併用住宅を考えるなら、まず住宅ローンが組める金融機関を押さえておきましょう。
賃貸部分の空室リスクなど考えないといけないこともたくさんありますが、資金計画面で一番大切なのは“住宅ローンがくめるかどうか”です。
金融機関の見つけ方は、二通りあります。
ひとつは、個別に問い合わせる方法です。
賃貸併用住宅を購入するエリアの金融機関を中心に、実際に相談してみるとよいでしょう。
個別に相談していくのは面倒だと感じるかもしれませんが、より正確な審査情報を引き出すことができます。
金融機関の見つけ方の2つめは、建築業者や仲介業者が提携している住宅ローンを利用する、という方法です。
賃貸併用物件の施工実績がある建築業者さんや、賃貸併用物件の売買をしている不動産業者であれば、過去に審査で利用したことのある金融機関なども、ある程度把握しているはずです。
また、こういった業者さんが提携している金融機関から選ぶのも手です。
いままで賃貸併用物件を建てているという長年の実績もあるため、すんなりと住宅ローン審査に通ったり出来ます。
・諸条件を確認する
金融機関を探すときには、どのような点を確認すべきなのかを明確にしながら探しましょう。
賃貸併用住宅のメリットを最大限に発揮するには、
①賃貸部分も住宅ローンが組めること
②将来の家賃収入も年収として見てくれること
という2点が認められるのが理想的です。
したがって、金融機関探しの際には、上記2点を確認しながら行うと良いでしょう。
特に、①が認められず、賃貸部分を金利の高いアパートローン等でしか借入できないとすると、わざわざ自宅の一部を賃貸物件にする必要はありません。
アパートローンでしか対応できない場合には、賃貸併用をやめることも含めプランを練り直すことになります。
購入を決める前に、金融機関にあたりをつけておく、という事前準備が大切です。
■まとめ
賃貸併用物件を購入することは、金銭面で非常にメリットの多い選択です。
しかし、すべてを住宅ローンで受けてくれる金融機関が見つからなければ、そのメリットが半減してしまいます。
いまのところ、新規で住宅ローンを組む際にも、借り換えをする際にも、賃貸併用住宅をすべて住宅ローンで受けてくれる金融機関は限られています(すべての金融機関が認めているわけではない、という意味です)。
金融機関にたくさん当たって、実際に相談してみることが重要なので、労力はかかりますが、やる意味はあります。
良い金融機関を探して選ぶことが大事なので、労力をかけたくない方は専門家に依頼したほうがベストなものが見つかるでしょう。
当研究所も過去、多くの相談をお手伝いしておりますので、もし依頼を希望される方はご相談ください。お待ちしております。