私のところに住宅ローン相談にいらっしゃる方の中には、国民健康保険の加入者も多く含まれています。
その多くは個人事業主の方ですが、会社勤めの方でもたまに国保の方がいらっしゃいます。
国保に加入している方から受ける質問で多いのは、国民健康保険や国民年金の滞納が住宅ローン審査に与える影響についてです。
国民健康保険料は毎月自分で支払うものなので、支払いを忘れたりすることで滞納もしやすい性質のものです。
特に、あまり病院にかかる機会がない方の中には、なんとなく払っているのが馬鹿らしくなってきて、支払いを後回しにしがちな人も多いようです。
健康保険証は住宅ローン審査の提出書類でもあるため、滞納がある方にとっては、それが審査に影響を与えるのか否かが大きな気がかりになっているようです。
では、国民健康保険料の滞納は住宅ローン審査に影響するのでしょうか?
結論から言うと、すべてのケースで審査に落ちるわけではないですが、多くのケースで審査結果に影響します!
特に滞納が習慣化していることが判明した場合には、かなりの確率で審査に通らないことになります。
本コラムでは、国民健康保険料の滞納が審査に与える影響について、説明していきたいと思います。
■住宅ローン審査で健康保険証を提出してもらう理由
上述したように、住宅ローン審査の提出書類には健康保険証が含まれています。
審査における健康保険証の役割は、まず第1に、
・身分を証明するものとして利用する(氏名、住所、生年月日の確認など)
がメインです。これにより借り手の個人情報に誤りがないかどうかを確認しています。
次に第2の利用法として、
・勤続年数の確認(保険証の資格取得年月日で分かる)
に用いられます。
住宅ローン審査における項目として、勤続年数は重要な項目です。本人の自己申告だけでは虚偽申告の可能性もあるため、それを確認する手段として、健康保険証の資格取得年月日を利用しています。
ここまでは社会保険加入者も国保の方も共通なのですが、国保加入者の方は最後に、
・有効期限の有無の確認(有効期限が設定されていないかチェックする)
にも利用されます。
国保の健康保険証には有効期限が設定されているものと、設定されていないものがあります。
有効期限が設定されている場合には、金融機関にとって”要注意人物”ということになるのですが、有効期限の有無を見ることでいったい何がわかるのでしょうか???
■有効期限付きの短期保険証の場合、審査に落ちる可能性が高い
実は、この有効期限が設定されている保険証こそが、国民健康保険料の滞納をしている証拠となるのです。
住宅ローンの審査を担当する側からすれば、“短期保険証を保有している=健康保険料を滞納している=お金の管理にだらしない人”という見方になってしまう、ということなのです。
したがって、短期保険証を保有している限り、住宅ローン審査には通らない可能性が高くなります。金融機関が一番困るのは、貸したお金が返ってこないことですから・・・。
ちなみに、短期保険証は、滞納してしまったらすぐに発行されるものではありません。ある程度の滞納期間の経過があって、初めて発行されるものです。
どこまで滞納したら短期保険証に切り替えられるのか?という基準については、実は市区町村によって異なります。
多くの自治体では、目安として6カ月以上の滞納に対し短期保険証を発行しています。
ただし、基準が厳しい地域では、過去約1年以内に1回でも滞納があると発行されるところもあります(正確な情報は各自治体のホームページなどで確認してください)。
この短期保険証への切替基準について、逆の見方をすれば、6カ月を切替基準とする地域にあなたが住んでいる場合には、6カ月以内の滞納なら短期保険証への切り替えも行われない、ということです。
従ってこの場合、住宅ローン審査でもあなたの滞納がバレることはない、ということになります(滞納の善悪については別問題ですが・・・)。
また補足ですが、短期保険証の有効期限をどのくらいの期間にするのか?ということについても、市区町村や滞納の状況によって異なります。
短いものだと有効期限1カ月というものもありますし、長くて6カ月くらいのです(一般的に、滞納がひどい方ほど有効期限は短く設定されます)。
したがって、住宅ローンの審査においても、有効期限が短い保険証を持っている人については、“この人は住宅ローン返済も続けられないだろう”と厳しく見られる可能性が高くなります。
住宅ローン審査に絡む点で以上のことをまとめると、
・国保の滞納が常態化していると、短期保険証に切り替えられる
・滞納がひどいほと短期保険証の有効期限は短く設定される ・短期保険証では住宅ローン審査に通らない可能性が高い |
となります。
■自覚がなくてもクレジットカード払いが原因で滞納になっているケースも
国民健康保険料の滞納については、もう一点気を付けておきたいポイントがあります。
近年、健康保険料をクレジットカード払いできる自治体が出てきています。具体的には、“yahoo公金支払”というシステムを通じて、健康保険料をカード払いできるようにしているのです。
このシステムを使う場合には、別途カード払いの手数料を自己負担しないといけないのですが、カード払いが出来るということで人気があるようで、これを導入する自治体が年々増えてきています。
いままでのコラムを読んできた読者の方ならピンと来ると思いますが、こういった公的な支払いをクレジットカード払いで行うときには、間接的な滞納に気を付けなければいけません。
自分では「今月の国民健康保険料は、クレジットカード払いで既に支払った」と思っていても、肝心のクレジットカードの引き落とし日に銀行残高が不足していたりすると、別の問題が生じてしまうのです。
クレジットカード払いの滞納は、個人信用情報に履歴として残ってしまうのです。また、滞納を繰り返していると信用情報に金融事故として登録されてしまいます。
そうなると、住宅ローン審査に落ちるリスクがかなり上がってしまうので、気を付けなければなりません。
国民健康保険料の滞納も、クレジットカード払いの滞納も、いずれもお金の管理能力に関わることなので、住宅ローン審査にかなり悪影響を及ぼすことは肝に銘じておく必要があります。
カード払いを導入している方は、両方の滞納について常に気を付けておきましょう。
■まとめ
国民健康保険料の滞納については、一定期間内であれば住宅ローン審査に影響することはありませんが、ひどい場合には、審査には通らないと思っておいた方が良いでしょう。
押さえておきたいポイントをもう一度まとめると、
・国保の滞納が常態化していると、短期保険証に切り替えられる
・滞納がひどいほと短期保険証の有効期限は短く設定される ・短期保険証では住宅ローン審査に通らない可能性が高い |
ということになります。
国保に限らず、お金の管理能力が色んな面からチェックされるのが住宅ローン審査です。
支払いに関しては常日頃からスケジュール管理を徹底するようにしましょう。