「マイホームを考えるのなら、引落口座の残高不足に気を付けた方がいいよ」
「延滞とか滞納をすると住宅ローンが組めなくなるよ」
周囲の人たちから、そんなアドバイスをもらったことのある読者の方も、少なからずいらっしゃると思います。
住宅ローン審査を行う金融機関は、どうやって延滞や滞納の情報を手に入れているのでしょうか?
その鍵になるのが“個人信用情報”と呼ばれるものです。
本コラムでは、住宅ローン審査の結果を左右しかねない個人信用情報について、説明したいと思います。
目次
■個人信用情報ってどんなものなの?
・個人情報とは違う
“個人信用情報”という言葉は、金融関係のお仕事をしていない方には耳慣れないかもしれません。
よく「個人情報のことですか?」と聞かれますが、個人情報と個人信用情報は、扱っている中身が異なります。
個人情報は、個人を特定できる情報(氏名や生年月日など)のことを指します。
一方、個人信用情報とは、主にお金を貸し出す金融機関(銀行、クレジットカード会社、消費者金融等)が、申込者の金銭管理に関する信用性を判断するために利用するものです。
・信用性を判断するための情報
「金銭管理に関する信用性」とは、わかりやすく言い換えると“あなたが借りたお金を返せる人かどうか?”ということです。
この”信用性”を確認することができるように、個人信用情報には、クレジットカードやローンの契約内容・支払い状況等の履歴が掲載されています。
そして、この個人信用情報に
・延滞や滞納の履歴がある
・債務整理の記録がある
という場合には、その方に対する融資を控えたり、
・既に多くの借入がある
という場合には、融資する金額を希望金額より下げたりするのです。
つまり個人信用情報とは、
・あなたに融資できるか否かを判断する材料
・あなたに融資できるとしたら、いくらまで貸せるかを判断する材料
ということができます。
■個人信用情報機関とは?
では、上述したような個人信用情報は、誰が?どのように?管理しているのでしょうか。
・誰が個人信用情報を管理しているの?
日本には、個人信用情報を管理する組織がいくつか存在しています。これらの組織は、「個人信用情報機関」と呼ばれています。
そして、それぞれの信用情報機関が保有する個人信用情報を利用できる者を、「会員」と呼んでいます。
信用情報機関に所属する会員は、主に貸金業を運営する金融機関です。具体的には、銀行、クレジットカード会社、消費者金融などです。
日本では、多重債務者の増加防止を目的に、平成22年より、全ての貸金業者がどこかの個人信用情報機関の会員になることを義務付けられています。
・どのように信用情報を集めてるの?
信用情報機関の話をすると、みなさん共通の疑問を持たれるようです。
「信用情報機関に登録される情報は、どこから集めてるの?」という疑問です。
独自の調査方法があるのだろうか…?と想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には違います。
先ほど、個人信用情報機関には、貸金業を営む会社が「会員」として加盟しているというお話をしました。
実は、彼ら「会員」が信用情報機関に金融情報を提供しているのです。
「会員」はそれぞれ貸金業をやっていますから、例えばあなたが、
・うちからいくら借りてるのか?
・毎月ちゃんと返済できてるのか?
・延滞などを頻繁にやっていないか?
ということをダイレクトに把握できているのです。
そして、その情報を個人信用情報機関に提供します。
信用情報機関にはたくさんの会員(貸金業者)が所属しているので、各金融機関の情報が集まってくるのです。
そして、会員からの求めがあれば、個人信用機関は、他の会員から提供された情報も含め、集めた情報を提供するのです。
・個人信用情報は誰でも開示できるの?
そうなると、もう一つの疑問が浮かびます。
「自分の信用情報は、金融機関に勤めている人には筒抜けなのではないか?」という疑問です。
銀行員になった幼なじみや、カード会社に転職した元同僚が、あなたの信用情報を全て把握できるとしたら・・・
考えただけで恐ろしいですよね。
ご安心ください。
誰でも信用情報を開示できるといろいろと問題があるため、信用情報機関と会員の間で以下の取り決めがなされています。
・返済能力を確認する目的以外での利用は禁止されている(罰則あり)
・本人の同意なく信用情報を照会することも禁止されている(罰則あり)
上記のように、いずれも罰則規定があるため、これらのルールは厳格に運用されています。
従って、金融機関で働いている友人や知り合いに勝手に信用情報をのぞかれる心配はありません。
■住宅ローン審査で利用される個人信用情報機関
では、住宅ローン審査で参照される個人信用情報とはどのようなものでしょうか?
・審査に使われる信用情報機関
住宅ローンを取り扱う金融機関では、審査に利用する信用情報機関を複数設定しています。
各信用情報機関は、お互い情報共有もしているのですが、すべてを完全に共有できているわけではありません。
したがって、審査をするときには、信用情報のチェック漏れがないように“複数”の信用情報を審査の材料に使うのです。
住宅ローン審査で主に使われる信用情報機関は
・全国銀行協会(KSC)
・CIC
・日本信用情報機構(JICC)
の3つです。
KSCの会員は主に銀行です。銀行の借入状況などが登録されています。
CICは割賦販売会社、クレジットカード会社、消費者金融などが主な会員です。クレジットカードの利用状況、ローンの返済状況などが登録されています。
JICCは消費者金融が主な会員です。消費者金融の借入情報等が登録されています。
代表的なものなので、覚えておきましょう。
・住宅ローン審査を受ける前の準備
上述したように、個人信用情報は開示を求めることができます。
開示には「本人の同意が必要」というのがルールですが、当然ながら“本人”であれば、自由に開示請求できます。
ここで留意してほしいのは、住宅ローン審査を受けるための準備として、金融機関に先んじて、これらの信用情報を自分で確認できるということです。
あなたが住宅ローンを申し込んだら、金融機関は、あなたの同意のもとに信用情報を取り寄せます。
そして、信用情報にキズがあれば、審査結果に悪影響を及ぼし、場合によっては審査に落ちることになります。
落ちた理由も分からず何度も審査にチャレンジしていると、状況はどんどん悪化し、ますます住宅ローンが組めない状況に追い込まれます。
審査を受ける前に、自分の信用情報がどういう状態になっているのかを確認しておけば、こういった事態も防げますし、対処もできます。
信用情報の開示請求のやり方や見方については、また今後アップするコラムで説明していく予定ですが、これを機会にぜひ、審査の前に信用情報を自分でチェックすることを意識するようにしましょう。
■まとめ
住宅ローンの審査結果に大きな影響を及ぼす個人信用情報。
本人の同意があれば、信用情報機関は信用情報を金融機関に提供します。
審査の準備を進めるときに、ぜひこの信用情報を自分で開示請求してみてください。
そうすれば、これから受ける審査への対策も見えてくるはずです。