住宅ローン相談の際に、ちょっと興味深いというか“なるほどなぁ…”とお客様の気持ちが分かる質問がありましたので、本日はそれについてお伝えしたいと思います。
会社員のAさんは、住宅ローンを組むことに決め、夫婦で銀行に相談に行きました。
「事前審査をしてみましょう」ということになり、申込をしてみることに。
そこで書類を見てドキッとします・・・
“他の借入”という欄があったからです。
実は、Aさんは奥様には内緒の借金がありました。
申込書を記入しながら迷ったそうです。
「借金を書くべきか、書かないべきか・・・?」
そして結局、“借金なし”と記入して事前審査に申し込みました。
最終的に審査には落ちてしまい、奥様にも正直に借金について告白することになってしまったのですが・・・。
そんなAさんから、こんな質問を受けました。
「一度、虚偽の申告をしてしまったら、もう審査には通らないのでしょうか?」
Aさんが迷いながらも虚偽の申告をしてしまった気持ちもよく分かりますし、その後に事の重大さを知り、慌てる様子も非常に気の毒でした。
本コラムでは、借入を含め、いろいろな虚偽申告をしてしまった場合に、住宅ローン審査ではどのように扱われるのかをお伝えしたいと思います。
目次
■偽名を使ったり、生年月日について虚偽の申告をした場合
大企業の大量の個人情報漏えいなどもニュースになる時代なので、まだ審査を申し込むか分からない段階で“金融機関に個人情報を伝えるのを避けたい”という方も増えています。
そこで、初めて住宅ローンセンターなどに相談に行くときには、偽名で申し込んだりする方もいらっしゃるようです。
そういうケースはどのように扱われるのでしょうか?
・本命の金融機関なら避けたい
まず他の虚偽申告にも共通する大事なことですが、本命の金融機関で偽名や虚偽申告をするのは避けましょう。
いずれ審査を申し込む可能性が高いのであれば、偽名や虚偽申告は審査にとってデメリットにしかなりません。
必ず本名で相談を受けましょう。
・できるだけ早い段階で訂正すること
もし、“ただ話を聞くだけのつもり”で偽名や嘘の生年月日で相談した金融機関の住宅ローン商品が気に入ったら・・・
多少不利に扱われる可能性はありますが、出来るだけ早い段階で正直に申告し直すべきです。
そのときに“なぜ虚偽の申告をしたのか?”という理由も非常に大事です。
悪意が無かったこと、個人情報のことも考えて慎重に情報出しをしていること、そして虚偽申告したことへのお詫びも伝えておいた方が良いでしょう。
住宅ローン審査では、単に金銭的な部分だけでなく、借り手の人物像なども見ています。信頼できる借り手だと思ってもらえるよう、丁重に対応していきましょう。
・一度通った審査がやり直しになったケースも
意図して虚偽の申告をしたわけではないのですが、事実と異なる生年月日のまま審査が進んでしまって、せっかく通った審査を一からやり直すことになったケースもあります。
住宅ローン審査を受ける際には、金融機関の人が虚偽記載等がないかを確認する流れになっています。
生年月日は公的証明書で確認できるものなので、金融機関側の確認ミスと言えばそれまでなのですが、正確な情報に基づいて行われなかった審査は、すべて無効となってしまいます。
意図的に虚偽の記載をしてしまった場合にも、訂正を忘れないよう気を付けましょう。
■他の借入を申告しなかった場合
・個人信用情報を照会されれば必ずバレる
上記のAさんと同様、自分の配偶者(妻や夫)に言えない借金を抱えている方は結構いらっしゃるようで、Aさんのような相談も年々増えてきています。
逆に、借金があることは夫婦で情報共有できているけれど、事前審査の際には恥をさらすようで言えなかった・・・という方も相談にいらっしゃいます。
借金については、個人信用情報を照会してしまえば、金融機関では、その借入先から金額まで正確に分かってしまいます。
したがって、隠し通すことはできないので、必ず確実に申告するようにしましょう。
・申告しなかった場合、デメリットはかなり大きい
借金について虚偽の申告をしてしまった場合、住宅ローン審査に与えるデメリットは、かなり大きなものになります。
金融機関が一番不安なのは“貸したお金が返ってこないこと”です。
他で借りているお金を申告しなかったということは、悪く見れば“お金のことをごまかす人”、好意的に見ても“お金の管理ができないだらしない人”と思われる可能性が高いです。
虚偽の申告をしてしまった場合は、その後の審査に“信用性”という意味で大きな影を落としてしまうので、必ず正確に、正直に、申告するようにしましょう。
・遅くとも信用情報照会前には訂正すること
では、借金について虚偽の申告をしてしまった方は、どうすれば良いのでしょうか???
現時点で審査まで進んでいない方の場合は、金融機関が信用情報を照会する前に正しい情報を申告するようにしましょう。
最近は事前審査で信用情報まで見るところが多いですが、いまでも本審査で初めて信用情報を照会するところもあります。
とにかく信用情報を照会される前に、早めに正しく申告することが大事です。
(参考コラム:「住宅ローンの事前審査(仮審査)と本審査の違いってなんですか?」)
一方、すでに虚偽の申告のまま審査を受けてしまっている方はどうしたら良いのでしょうか???
おそらく、その金融機関で住宅ローンを組むことは難しいでしょう。
次回の審査の教訓として活かし、夫婦できちんと情報共有したうえで、次に臨みましょう。
■物件購入価格を、実際の価格より高く申告した等のケース
虚偽の申告と言えば、物件購入価格も対象になります。
以前はよく、不動産業者と相談して、“実際の購入価格より高めの借入額を申請する”という方法が用いられていたようですが、現在は法的な規制もあり、そういうことも少なくなりました。
ただ、いまだにそういう申請方法を勧めている業者も存在しているようです。
・多くの金融機関は正確な物件価格を把握している
では、物件購入価格を高く申告した場合、どうなるのでしょうか???
一般的には、正確な価格を金融機関が把握できていない限り、審査に影響はありません。
しかし最近では、多くの金融機関が、周辺の正確な物件価格を把握しているようで、このような申請に関しては、あっさり審査に落とされているケースが多いようです。
多くの金融機関では営業エリアを設定しているため、特に最近は、エリア内の物件のチラシなどは、しっかり目を通しています。当然、物件価格も正確に把握しています。
“できるだけ多くの金額を借りたい”という気持ちはわかりますが、ほとんどうまくいかないので避けておいた方が良いでしょう。
・提出書類(健康保険証、○○等)の偽造も罪が重い
借入金額の虚偽申告以外にも、提出書類(健康保険証や源泉徴収票など)の偽造なども実際にはあるようです。
源泉徴収票を偽造することで収入を水増ししたり、健康保険証を偽造して勤続年数を長めに見せたりして、審査を有利に進めることが目的のようですが、金融機関はこれらの偽造を即座に見抜きます。
なんと言っても毎日のように見ている書類ですから、“あれ?”と思うところが一か所でもあれば徹底的に調査します。
これらの行為は公的文書偽造にも該当するので、法的にも処分されかねません。絶対に避けるようにしましょう。
・業者や担当者がマークされているケースも
物件価格の操作や、提出書類の偽造などは、金融機関が最も嫌う行為です。
金融機関によっては、過去にこれらの行為を行った不動産業者や物件担当者を、厳重にマークしているケースもあります。
場合によっては、その物件担当者を仲介して申請された住宅ローンは、かなり厳しく審査されたりすることもあります。
過去のケースでは、担当者を変更したら審査に通ったという方もいらっしゃいます。
甘い誘惑に乗って不正行為をしてしまわないように気を付けましょう。
■まとめ
虚偽の申告は、住宅ローン審査に良い影響を与えません。
むしろ、信用性という意味で、デメリットの方がはるかに大きいです。
審査の仕組みについてしっかり知識をつけて、法を犯したり、金融機関にマークされることのないよう気を付けましょう。
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