「マイホームの購入を考えているけど、住宅ローンが組めるか不安で・・・」
「審査に通るか心配です。落ちると家は買えないんですよね?」
「住宅ローンが通らなかったのですが、原因がわかりません」
こういった声は、マイホームを購入する際には尽きない悩みとして出てきます。
最近では、本人もよく分からない理由で審査に落ちるケースも頻発していて、さらに相談が増えているのを実感しています。
これらの不安を解決する近道は、「住宅ローン審査の審査項目を熟知すること」です。
“敵を知り、己を知れば・・・”ではないですが、
・金融機関が何を審査しているのか?
・自分が審査で引っかかりそうなポイントはどこか?
・審査でのマイナスポイントをどのようにカバーしたら良いか?
ということを把握しておくだけで、審査に対する不安はかなり軽減できます。
本コラムは、“住宅ローン審査において金融機関が重視している項目”を把握してもらうのが目的です。
そして、その知識を、今後審査を受ける際の事前準備や、審査に落ちた場合の原因特定に活かして頂ければと思います。
目次
■住宅ローン審査を受ける前に知っておくべき審査項目トップ10
では、そもそも金融機関では、どのような項目を審査しているのでしょうか?
金融機関によっても異なりますが、重要視している項目は共通しています。
実際に金融機関に行ったアンケート結果を見てみましょう。
「融資を行う際に考慮する項目」
(数字は、その項目を審査で「重要視する」と回答した金融機関の割合)
①完済時年齢 99.1%
②借入時年齢 97.5% ③返済負担率 97.2% ④勤続年数 96.5% ⑤担保評価 96.2% ⑥年収 96.2% ⑦健康状態 94.8% ⑧融資可能額 92.2% ⑨連帯保証 90.7% ⑩金融機関の営業エリア 90.7% |
(「平成 25 年度 民間住宅ローンの実態に関する調査報告書」 国土交通省 住宅局 )
90%以上の金融機関が、「審査を行うときに重要視している」と答えたのが、上記の項目です。
これらの項目に、さらに細かい項目を含めた総合的な判断により、住宅ローンを通すか否認するかを決定しています。
■トップ10の審査項目の詳細を解説
それでは、トップ10の審査項目について、ひとつずつ見ていきましょう。
①完済時年齢 99.1%
「完済時年齢」とは住宅ローンの返済が終わる年齢です。
完済時年齢の設定としては、「最大80歳まで設定が可能」という金融機関が多いですが、80歳までに返せれば無条件にローンが組める、ということではありません。
審査という観点から言えば、完済時年齢は“若ければ若いほど良い”ということになります。
区切りとしては、完済時年齢が退職より前か後かで、評価が変わってきます。
当然、退職までに完済できるケースの方が、審査では有利です。
スコアリング方式(審査項目ごとに得点を付け、その合計点で審査結果を決める方式)を採用している金融機関もたくさんあります。
そういった金融機関では、
退職年齢≧完済時年齢・・・評価が高い
退職年齢<完済時年齢・・・評価が低い
というような採点をしています。
②借入時年齢 97.5%
借入時年齢とは、住宅ローンを借り入れる年齢です。
これも形式上は20歳以上70歳未満であれば、規定上は借入できます。
しかしこれも、あくまでも規定上の話。
審査という観点から言えば、“若ければ若いほど良い”というのは退職時年齢と変わりません。
ただし、あまり若すぎると、⑥で出てくる「年収」がまだ低い可能性もあります。
したがって、この項目単独で住宅ローンの合否が決まることはなく、あくまでも“総合的な評価を下す上での1項目”ということになります。
③返済負担率 97.2%
返済負担率とは、年収に対する住宅ローン返済額(年額)の割合のことです。
当然ですが、返済負担率は“低ければ低いほど有利”です。
目安としては、返済負担率が20%程度なら理想的です。
一方、借入限度額ギリギリまで借りようとすると、他の審査項目の得点が高くなければ「借入額を減らしてください」と言われることになります。
返済負担率の計算のやり方は、金融機関によっても微妙に違います。
また、サラリーマンと個人事業主でも計算方法が異なります。
ただ、審査項目の中では最も重要視されるものの1つなので、返済負担率については今後UPする別コラムで詳しくお伝えする予定です。
④勤続年数 96.5%
勤続年数とは、現在の会社に勤めている年数のことです。
勤続年数も“長ければ長いほど審査に有利”です。
では、どのくらいの年数が必要なのでしょうか???
多くの金融機関では、“原則3年以上”という規定になっています。が、あくまでも“原則”です。
終身雇用制度が崩壊した現在では、3年経過していなくても住宅ローンを組めるケースが多々あります。
目安としては、1年以上はほしいところです。
1年未満だと住宅ローンが組めないわけではありません。
・他の審査項目の得点が高い
・独占業務のある国家資格などを持っている
・長年業績の良い企業に勤めている
というような場合には、勤続年数が短くても、総合的に判断して審査に通るケースも多々あります。
また、フラット35などは勤続年数に対する審査がゆるいので、そういった金融機関を利用することもできます。
⑤担保評価 96.2%
担保とは、住宅ローンの返済ができなくなったときに補てんするためのもので、具体的には購入予定物件(土地や建物)のことをいいます。
したがって、担保評価とは、購入予定の物件を担保にしたときの金銭的価値のことをさします。
当然“担保評価が高い方が審査に有利”となります。
何に比べて高ければよいかというと「借入金額に比べて」です。
つまり、
担保評価≧借入金額・・・評価が高い
担保評価<借入金額・・・評価が低い
担保評価が借入金額より小さい場合には、審査上かなり不利になるので、借入額を小さくする(頭金を増やす、価格の低い物件に変更する)といった工夫が必要です。
⑥年収 96.2%
もっとも分かりやすいのが年収です。
年収は当然“高ければ高いほど有利”です。
ただし、住宅ローン審査は、それぞれの審査項目ごとの評価を総合して判断するものなので、年収がとびきり高くても他の項目の評価が低ければ、審査で落ちてしまうことすらあります。
特に金融機関では返済能力を重視するので、
・年収は高いけれど、他にも多額の借金がある
・年収は高いけれど、お金の管理ができていない(延滞履歴などがある)
という場合には、かなり厳しく見られます。
年収の高さも返済能力の一部ではありますが、お金の管理能力にも比重を置いているということです。
1項目だけが単独で高評価でも審査に通らないこともある、ということを認識しておくことが大事です。
⑦健康状態 94.8%
意外な方もいるかもしれませんが、住宅ローン審査では健康状態も重視されています。
住宅ローンを組む条件として、団体信用生命保険(団信)に加入することを義務付けている金融機関も多いです。
団信には、「ローン返済者が死亡しても、残りの返済額を保険でまかなう」という役割があります。
そして、団信に加入するには、健康状態が良好であることが条件になります。
大病を患っていて余命いくばくもない人に、多額の保険加入を認める保険会社なんて、あり得ないですよね。。。
健康状態については、“団信加入時の審査に引っかからなければOK”ということになります。
団信の審査項目については、別コラム(「団体信用生命保険(団信)の審査項目と告知での注意ポイント」)にもまとめてありますので、参考にしてください。
⑧融資可能額 92.2%
融資可能額とは、いくらまでお金を貸すことができるのか?ということです。
融資可能額は金融機関が算出するものなので、それぞれの金融機関によっても計算方法は異なります。
ただ、③返済負担率のところでもお伝えしたように、融資可能額ギリギリで申し込むと審査は厳しくなります。
たとえば、他の審査項目がかなり高評価であるとか、総合的に判断したときに“OK!”と言える状態になければなりません。
したがって、審査では“借入額が融資可能額より低ければ低いほど有利”ということになります。
返済負担率や融資可能額については、審査の上でもかなり重要な項目になるので、また別コラムでも取り上げていきます。
⑨連帯保証 90.7%
連帯保証とは、住宅ローンの借り手がローン返済を継続するのが困難になったときに、代わりに返済してくれる人のことをいいます。
住宅ローンでは、通常は連帯保証人をたてることはありません。
各金融機関が提携している保証会社を利用するからです。
ただ例えば、以下のようなケースでは、連帯保証人を立てることもあります。
・夫婦連盟で住宅ローンを組む場合(収入合算のケース)
・団信に加入できない等の理由で、連帯保証人を立てて住宅ローンを組む場合
上記のような場面では、連帯保証人の返済能力も審査の対象として重視されることになります。
⑩金融機関の営業エリア 90.7%
金融機関には、それぞれ営業エリアがあります。
多くの支店を持つ金融機関の場合は、「A支店の営業エリアはこの地域、B支店の営業エリアはこの地域」という感じで分かれています。
住宅ローンに関しては、現住所より住宅購入後住所が重視されるので、“新居の住所が営業エリアにあること”が大事です。
また、住宅ローンは数十年にわたり返済していくものなので、返済中にどんな不測事態があるかわかりません。
場合によっては、金融機関のローン担当者が自宅まで行かなければならない事態が生じることもあります。
したがって、あまりエリアから遠く離れると、金融機関も住宅ローンを組みたがらないと思っておいた方がよいです。
■他にもある重要な審査項目
ここまで、住宅ローン審査で重要視される項目トップ10を見てきました。
上でも書きましたが、審査はあくまでも総合評価で行われます。
いくつかの項目で良い評価を得ていても、大きなマイナス評価につながる項目があれば、審査で落ちることもあります。
これを逆に捉えれば、いくつかの項目がマイナス評価であっても、他でカバーできれば審査に通ることもあります。
あくまでもトータル評価なので、トップ10の項目をおさえつつ、それ以外の項目でプラス評価が得られるようにすることも大事です。
では、他にもある重要な審査項目を見てみましょう。
(「平成 25 年度 民間住宅ローンの実態に関する調査報告書」より抜粋)
・カードローン等の他の債務の状況や返済履歴 87.4%
住宅ローンは金銭の絡む契約なので、当然、金銭面は重要な審査項目となります。
審査項目トップ10の中にも、返済負担率や年収などのお金がらみの項目がありますが、それに加え“お金をしっかり管理する能力があるか?”というところも見られます。
・カードローンで大きな借入がある
・消費者金融でたびたびお金を借りている
・借りたお金の返済を延滞した履歴がある
といったような状況では、他の審査項目でポイントが高くても、住宅ローン審査は非常に厳しいものになります。
当然ですが、“他に借金がない”“過去の返済履歴に遅延がない”というのが理想的です。
・雇用形態 75.9%
雇用形態について押さえておきたいのは、個人事業主(自営業)と給与所得者(サラリーマン)の違いです。
個人事業主にとって、住宅ローン審査は厳しいものになります。
金融機関は、「この人が住宅ローンを何十年も返済し続けられるかどうか?」を審査しているので、収入の安定しない自営業が不利なのは納得できますよね・・・
同じ年収額であっても、自営業者の借入可能額はサラリーマンより低くなることが多々あります。
個人事業主こそ住宅ローン審査の準備を入念にすべきです。
・申込人との取引状況 62.1%
住宅ローンを組む金融機関と、借り手であるあなたの間に、取引があるかどうかも審査のうえで評価の対象となります。
・個人事業主の場合、取引銀行となっているかどうか?
・給与所得者の場合は、給与振込口座になっているか?
・給与振込口座でなくても、口座を開いているかどうか?
といったことが審査上プラスに働いたりします。
いままで取引が無くても、審査の前に口座を開設しておく、というのも一つの手です。
・業種 41.4%
住宅ローンとあまり関連性がないと思われがちですが、借り手であるあなたが所属している業種についても審査されることがあります。
業種を審査する理由は、“離職率の高い業種”というのが存在するからです。
“離職率が高い業種に勤めている=将来、転職や独立を考えているかもしれない”と金融機関は考えます。
たとえば、運送業やIT系の業種などは、少し審査が厳しくなることもあります。
ただし、あくまでも総合評価なので、他の審査項目が特に問題なければ、業種のせいで審査に落ちるということはありません。
・雇用先の規模 33.7%
これは、勤務先の規模ですね。
借り手の返済能力を、現在お勤めの会社の倒産リスクの観点から審査しています。
大企業、特に一部上場企業などにお勤めの場合には、審査は有利になります。
当然、中小企業などは、その規模や業種にもよりますが、上場企業に比べ少し不利になります。
大企業でなくても、たとえば公務員等は評価が高くなります。
・家族構成 28.4%
金融機関によっては、家族構成なども審査で見ていきます。
家族の中で、他に所得がある人がいれば有利になり、逆に扶養者が多ければ少しマイナスになります。
要は、家族構成全体での収入と支出のバランスによって、評価が変わると考えてください。
家族構成については、あくまでも総合評価の中の1項目に過ぎず、たとえば「扶養家族が多いから・・・」という理由だけで住宅ローンが組めないようなことは考えられないので安心してください。
・所有資産 25.2%
所有資産については、当然“多ければ多い方が有利”です。
資産としては、預貯金や株などの金融商品はもちろん、他に所有している不動産等も含まれます。
また、意外に盲点なのが“積み立て型の保険”などです。
学資保険や個人年金、あるいは解約返戻金が積みあがるタイプの保険(養老保険や終身保険)などは、所有資産としてアピールすることができます。
■まとめ
本コラムでは、住宅ローン審査の項目の詳細についてお伝えしました。
コラムにも書きましたが、審査は“総合評価”です。
そして、「継続して住宅ローンを返済できるかどうか?」を重点的に見ています。
年収が高く、資産が十分にあっても、“この人はお金にだらしない!”と判断されたら審査で落ちることだってあります。
審査項目の詳細を知ると、「自分は中小企業勤めだから・・・」とか、「年収が低いから・・・」と嘆かれる方もいらっしゃいます。
しかし、大事なのは“プラス評価を取れるところからコツコツ頑張る”ということです。
・自己資金をしっかり準備する
・借金があるなら、計画的に返済する
・安易に転職や独立をせず、勤続年数を伸ばす
といったところからスタートし、審査に向けて良い準備を整えれば、必ず住宅ローンは組めます。
このコラムが、そのための参考となることを願っております。