住宅ローン審査では、いわゆる”属性”というものも審査されます。
属性とは例えば、
・勤務先
・勤続年数
・年齢
・家族構成
といったものです。
属性に関しては、金融機関から良い評価をもらうために努力しても、その努力が実を結びにくい分野です。
せいぜい「転職するつもりだったけど住宅購入を考えて時期をずらそう」くらいのことしかできません。
したがって、住宅ローン相談でも属性に関する質問はちょこちょこ頂きます。
特に最近増えているシングルマザー(母子家庭)という家族構成が、審査にどのような影響を与えるかについては、いろんな方から質問や相談をいただいています。
本コラムでは、母子家庭と住宅ローン審査の関係についてお伝えしたいと思います。
目次
■母子家庭でも住宅ローンは組める
上述したように、母子家庭は以前より増加傾向にあります。
離婚率の上昇がいちばん影響しているとは思いますが、ご主人を早くに亡くしてしまった後、シングルマザーとして子育てとお仕事の両方を頑張ってらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。
「母子家庭には住宅ローン審査は厳しい!」と思ってらっしゃる方も多いようですが、そうとは言えません。
結論から言えば、母子家庭でも住宅ローンは組めます!
審査が厳しくなると思っている方の多くは、「母子家庭=低所得」というひと昔前のイメージを持たれている方が多いようです。
いまは女性の社会進出も目覚ましく、一般的な共働きのご夫婦でも、奥様の年収のほうが高い方もかなりいらっしゃるので、以前のイメージとは全く違ってきています。
また、そもそも住宅ローン審査は、申込者(借り手)を対象に行われるものです。
ご夫婦それぞれで持分を決めてローンを組まれる方もいらっしゃいますし、共働きでも奥様のみで住宅ローンを組む方もいらっしゃいます。
年収に対して借入額が適正であれば、お金の面では貸せる条件を満たしているので、シングルマザーであっても、他の方とほぼ公平に審査してもらえます。
■安定して返済できると判定してもらえるかが重要
住宅ローン審査では、“この人にお金を貸して、将来的にきちんとお金が返ってくるか?”を見ています。
したがって、“安定して住宅ローンが返済できる人”と判定してもらえることが、シングルマザーが住宅ローンを組む上でもっとも重要です。
以下、そのためのポイントをお伝えします。
・借入希望額に見合った年収を確保すること
ここまで読んできて察しがつくと思いますが、シングルマザーが住宅ローンを組むために重要になるのは“年収”です。
ある程度の年収を確保しなければ、借入希望額が通らないことだってあり得ます。
したがって、母子家庭の方でマイホームの購入を検討される方は、年収と借入希望額が見合うように、購入物件の予算を決めることが大切です。
逆に、購入物件の予算に見合った年収を得られていないのであれば、それに向けて年収アップできるようにスキルアップ等をしていく必要があります。
(参考:「住宅ローン限度額(借入可能額)を自分で簡単に計算する方法」)
・勤務形態や勤続年数、勤務先も大事
シングルマザーでもそうでなくても、住宅ローン審査で見られるポイントは変わりません。
したがって、年収以外にも大事な要素はあります。
特にシングルマザーの方だと、勤務形態・勤続年数・勤務先なども大事になってきます。
勤務形態が派遣社員や契約社員だと、審査では不利に扱われます。
パートだとなおさらで、それだけで住宅ローンを組めない金融機関がほとんどです。
住宅購入を考えるなら、正社員という雇用形態を確保するのが理想です。
また、勤続年数も3年以上を目安に頑張りましょう。
母子家庭になってから仕事復帰し、まだ勤続年数が浅いという方は、ある程度時間をかけて勤続年数を増やすことが大切です。
勤続年数1年程度でも住宅ローンが組める金融機関はありますが、審査基準は金融機関ごとに異なるので、早く買いたい場合は確認が必要です。
金融機関の窓口で直接相談してみることをお勧めします。
また、勤務先も大きければ大きいほど安心です。
上場企業などであれば、審査では少し有利になります。
福利厚生も整っているので、仕事と家庭のバランスを取る、という意味でも良いでしょう。
ちなみに、国家資格をお持ちの方(医師、看護師、薬剤師、弁護士、会計士など)は住宅ローン審査では有利になります。
一般的に年収も高めで安定しているので、他の部分で多少不利な条件(勤続年数が短い等) があっても、審査に通ることもあります。
・起業する場合は時間をかけて計画的に準備する
シングルマザーの方で起業を考える方もいらっしゃるでしょう。
仕事と家庭のバランスを考えると、自分で商売を始めるというのも良い選択肢だと思います。
しかしながら、住宅ローン審査では厳しく扱われてしまうので、そこだけは注意してください。
シングルマザーであるか否かに関わらず、起業している方は“個人事業主または法人経営者(法人を設立した場合)”として審査されます。
したがって、住宅ローンの審査時に、過去三期分の売上や年収までチェックされます。
個人事業主の方は節税のために意図的に年収を下げている(経費を多くしている)方が多いため、経験上、借入希望額に見合った年収に達していない方がほとんどです。
住宅の購入を視野に入れるなら、年数をかけて準備をする必要があるので、そのあたりのことを視野に入れながら売上と年収の確保を心がけましょう。
(参考:「個人事業主が住宅ローン審査に向けてやるべき5つの準備」)
■シングルマザーが住宅ローンを組むときに注意すべきこと
以上見ていただいたように、シングルマザーであっても、サラリーマン男性であっても、住宅ローン審査の内容にそれほど 変わりはありません。
むしろ年収によって借入可能額が変わったり、雇用形態・勤続年数・勤務先等で審査の通りやすさが変わってくるだけです。
ただし、ご夫婦共働きの場合と比べて1点だけ不利な場合があります。
それは、シングルマザーで健康状態が悪く、団信が組めないような場合です。
ご存知のように、団信(団体信用生命保険)への加入が住宅ローンを組む条件になっている金融機関がほとんどです。
逆に、団信に加入できなければ住宅ローンも断られるため、健康状態は住宅ローン審査の重要な要素です。
共働きのご夫婦の場合、たとえばご主人が健康状態が悪ければ奥様名義で住宅ローンを申し込む。あるいは奥様が健康状態が悪ければご主人名義で住宅ローンを申し込む、といったことが可能です。
ですが、シングルマザーの場合、住宅ローンを組める人がシングルマザー本人のみに絞られるため、その張本人の体況(健康状態)が悪いと、代わりに組める人がいないのです。
もちろん、団信に加入できなくても住宅ローンを組む方法はいくつかありますが(参考:「団体信用生命保険(団信)に落ちても住宅ローンを組む5つの方法」)、すんなり審査に通る状態であるに越したことはありません。
住宅購入を考える場合は、ご自身の健康状態もしっかり維持する必要があるということを心に留めておいていただけたらと思います。
■まとめ
母子家庭(シングルマザー)でも、住宅ローンは組めます。
審査自体もサラリーマン男性となんら変わらないので、お金の面では計画的な準備さえすれば問題ありません。逆に、審査に通らないとしたら家族構成以外の原因を探るべきでしょう。
むしろお金の準備だけでなく、健康状態を維持し、団信に加入できるようにしておくことも大切です。