住宅ローン相談には、色々な案件が持ち込まれます。
特に私の場合、“審査に通らない”案件の相談を受けていることが多いため、その対策に追われることも多々あります。
相談を受ける中で難易度が高いもののひとつに、「借地権」の相談があります。
呼んで字のごとく、“土地を借りて”その上に住宅を建てるというやり方です。
借地権がらみの住宅ローン審査は、
・新規の住宅ローンは組める場合が多い
・借り換えはほとんど無理
というのが特徴です。
借換をして金利を引き下げると大幅なコスト削減になるので、この時代、借換を考えている方は少なくありません。
「家を買うときに住宅ローンが組めたのだから、借り換えも大丈夫だろう」と考え動き始めたものの、借地権であるために断られ、借り換えの難しさを知り、あきらめかけている方も多いようです。
「借地権付き物件の住宅ローン借り換えは、無理なのでしょうか?」と、よく質問されます。
結論から言えば、借地権でも借り換えに成功した事例はいくつもあります!
本コラムでは、借地権付き物件の借り換えが難しい理由と、その対策方法についてお伝えしていきたいと思います。
目次
■土地の所有権がないことがネック
・借りている土地には担保評価がつかない
借地権付き物件の借り換えが難しい一番の理由は、“土地に担保評価がつかない”というところにあります。
住宅ローンを組むときには、金融機関は必ず“担保”を取ります。
担保を取ることで、将来、住宅ローンの返済が滞ったときに、その土地と建物の価値で補うことができるのです。
借地権の物件の場合、土地はあくまでも“借り物”なので、住宅ローンを組む契約者には土地の所有権がありません。
したがって、土地を担保とすることが難しいのです。
・借り換えたい融資額まで届かない
土地を担保にすることが難しいと、何が問題なのでしょうか???
住宅ローンの借入額は、年収によって決まると思っている方も多いですが、それだけではありません。
土地や建物の担保評価をもとに、“いくらまで貸せるのか?”を決めています。
そうしないと、返済が滞ったときの保証にならないからです。
借地権の物件の場合、主に建物を担保に住宅ローンを組むことになります。
新規で住宅ローンを組むときには、なんとか担保評価を確保することが出来る場合も多いでしょう。
しかし、借り換えの場合、建物の評価も落ちてくるので、「借換したい金額まで、担保評価が届かない」なんてことも起こり得るのです。
その結果、借り換えの審査にも通らないといった事態が起こるのです。
■戸建てになるとさらに困難
・マンションの方が借換しやすい
ここまで読んでお分かりのように、土地が担保に入れられないのが、借地権物件の一番のネックです。
では、借地権の物件が必ずしも借り換えができないかというと、そうでもありません。
ただし、借換できる可能性が比較的高いのは、借地権物件の中でもマンションの場合です。
マンションの方が借り換えに有利なのには理由があります。
マンションは戸建てに比べて、土地の面積はもともと少ない建物です。
借地権物件でない場合でも、所有している土地は戸建てに比べてそれほど大きくありません。
したがって、もともと担保のメインは土地ではなく建物なのです。
そういった事情もあり、借地権の物件でも、マンションの方が借り換えをしやすいことになるのです
・戸建ての場合、将来の売却も困難
借地に戸建てを建てている場合にも、住宅ローンを借り換えることが全く無理なわけではありませんが、借地権に建てている一戸建ての場合、また別の問題を抱えることが予想されます。
それは、将来家を売却したいと思ったときに”売りにくい”という問題です。
たとえば、定期借地権の設定は50年のところが多いのが一般的です。
「50年後は自分たちもここには住んでないだろうし、子供達もそれぞれ独立して家庭を持つだろうから、借地権の物件のほうが安くて良いじゃないの?」と考えて、購入されている方も多いようです。
しかし、定期借地権の期間設定が、将来ネックになるのです。
・実際の事例
実際の事例を見てみましょう。
定期借地権50年の土地に物件を購入したAさんが相談に来られました。
35年間まじめに住宅ローンを返済し、晴れて返済も完了したとのこと。
「子供たちも独立したし、そろそろ終の棲家について検討しようかな・・・」と考えて相談にいらっしゃいました。
結論からお話しすると、売却は難航しました。
理由は借地権の残りの短さです。
この住宅の借地権は残り15年になっています。
物件が気に入って「買いたい」という人は現れるのですが、住宅ローンを組める期間を「15年以内」に設定しないといけないため、月々の返済額が大きくなってしまうのです。
物件は気に入っているけれど、「この返済額では返せない・・・」という方が何人もいらっしゃいました。
結局、現金一括で購入できる方が現れて一件落着だったのですが、借地権の場合はこのような問題が起こることも考えていかなければなりません。
もし、借換を考えるタイミングで「売却して住み替えるのもありかな・・・?」と思っているのであれば、思い切ってその選択をしたほうが良い結果に繋がる可能性も高いと思っています。
■引き受けてくれる金融機関は少ない
・新規ならOK
以上からお分かりのように、借地権の物件は新規の住宅ローンを組んでくれるところはあります。
読者の方の中にも、既に借地権物件をお持ちの方もいらっしゃるでしょうから、「購入時は簡単にローンが組めた」という実感があるでしょう。
借地権物件を仲介する業者さんも、先に金融機関に“住宅ローンを組める”という約束を取り付けてから販売しているので、仲介業者の紹介する住宅ローン商品を使えば、他の原因が無い限り、借地権物件だからという理由で住宅ローン審査に落ちることはないでしょう。
・手続きが煩雑
ただし、やはり借り換えは大変です。
借地権物件の借換を受けてくれる金融機関自体も少ないですし、仮に受けてくれるところが見つかったとしても、手続きが煩雑なのであきらめる方も多いです。
手続きの部分であきらめる方は、“地主さんの同意が取れない”ことが原因で借換をやめる方が多いです。
住宅ローンを組むときには、借地にも抵当権を設定する必要があります。
そのときには、土地の所有者である地主さんの同意が必要になります。
そして、その同意を嫌がる地主さんも多いのが現実です。
貸している土地を担保に取られるので、抵抗するのも分かりますよね・・・
借地権の借り換えにはいくつかの難所があります。
それら一つ一つを乗り越えられるかが、借換を実現できるかどうかの勝負になります。
■まとめ
まず、借地権つきの物件の場合、
・新規の住宅ローンは組みやすいが、
・借り換えは難しい
ということを念頭に置いておきましょう。
・借換を受けてくれる金融機関が少ないこと
・地主さんに反対される可能性もあること
を考えると、借換を検討するタイミングで、売却し住み替えを検討することも一つの手です。
ただし、借り換えできる可能性がゼロではないので、借地権付きの物件にお住まいの方で借換を検討する際には、ぜひ専門家に相談してみることをお勧めします。
借地権物件の借り換え相談に実績のある方であれば、借り換えが可能かどうかも含めアドバイスがもらえるでしょう。
当研究所でも豊富な事例を持っていますので、借換を検討する際にはぜひお問い合わせください。